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次回のふくろうゼミは、5月19日(日)、池袋ルノアール・マイスペース MS&BB池袋西武横店 2号室にて15:00〜17:00に行います。

ちょうど10回目の例会にあたる次回のテーマは「ポスト3.11の生き方、社会の在り方を考える」で、発表者はふくろうゼミ発起人でもある木村浩則さんです。

木村さんに、テーマについてお話していただいた後、参加者の皆さんで話をしようと思っています。

重たいテーマかもしれませんが、「今」を生きる上で私たちのこころの片隅に必ずある共通の記憶または問題、そして課題です。

3.11に関して少しでも気になることがある方、またはご自身の3.11の記憶を共有したい方、気背負わずご参加ください。

木村さんに一文書いていただきました。



「ポスト3.11の生き方、社会の在り方を考える」

問題提起 木村浩則(教育学研究者)

3.11直後、被災地以外でも多くの人々が、「震災鬱」(あるいは「震災躁」)とも呼びうる精神状態にあったと言われる。私自身もしばらく何も仕事が手につかず、ネットの震災報道や原発報道とにらめっこしている毎日であった。日本人の多くがあの時、いわば「実存的危機」とも呼びうる状況のなかに投げ込まれていたのではないか。そして今やおそらくその大半は、「危機」を脱して日常を取り戻した、あるいは「正常化」したと感じている。しかしその感覚は「真実」だろうか、それとも「錯覚」だろうか。

「正常化」とは果たして何か。再び政権に返り咲いた自民党安倍内閣は、震災や原発事故などなかったかのように、原発再稼働を公言し、経済至上主義路線をひた走っている。学校現場では悉皆の全国一斉学力テストが復活され、評価と競争の教育が再び強められている。宮城県の「震災などなかったかのように」進められる高校入試改革はその典型であろう。「正常化」とは、3.11の記憶を忘却することなのだろうか。

安倍政権は、原発「再稼働」によって、経済成長に「不都合な真実」をなかったことにし、「教育再生実行」によって、愛国心教育に「不都合な歴史」をなかったことにしようとしている。
だが、当然のことながら、被災者や震災で家族・知人を失った人々に、いったん失われてしまった日常が「正常化」することなどありえない。かりに生活の再建が実現したとしても、3.11以前の日常が戻ってくるわけではない。それは、震災によって強いられた「非日常」が日常化したにすぎない。

震災2年目に行われたNHKの調査によると、「復興が遅れている」「復興が進んでいる実感が持てない」と答えた被災者は9割近くにのぼったと言う。しかもその割合は一年前の調査よりも増えている。東京ではオリンピック誘致のお祭り騒ぎに興じている傍らで、被災地では「二年過ぎても何も変わらない現実」にいらだちを覚え、焦燥感を深めている人々がいる。

3.11に経験した実存的危機は、「忘我」の状態であったのか。そしてようやく取り戻した日常を「我に返った」と表現していいのか。むしろ、あのときわれわれは「夢から覚めた」のであって、再び眠り込まされつつあるのではないか。映画『マトリックス』のなかで、サイファは、「苦労の絶えない現実よりは安楽な夢の世界の方がましだ」と、夢から目覚め、現実の中で自由のために戦う仲間たちを裏切り、再びマトリックスの世界すなわち眠ったまま支配されている世界に舞い戻ろうとする。それは「再稼働」を決定し、再び「安全神話」に戻ろうとする政府の姿に重なる。あるいは、あの時「子どもの生命を守ること」が教育の原点であることに気付いた教師たちが、再び点数至上主義、勝利至上主義の教育にまい進し始めたとしたら、それは「新自由主義」のまどろみに再び落ち込んでしまったことを意味しないだろうか。

3.11に経験した「危機」を想い起こす必要がある。「あの時たしかに世界は変化したのだ」。その経験と思いが、新たな文学作品や芸術作品を生み出している。一人の教育研究者として私もその思いを共有したい。では、世界はいかに変化したのか、その風景はどのようなものか。「危機」から立ち上がる社会と教育をいかに構想しうるのか。そして、それをどう記述するのか。問い直さねばならない、われわれが再び眠り込まぬうちに。



ふくろうゼミ第10回例会

<日時>  2013年5月19日(日) 15:00〜17:00
<場所>  池袋ルノアール・マイスペース MS&BB池袋西武横店 2号室
<参加費> コーヒー代+α(人数が増えるほど安くなります。ふるってご参加を!)

参加は当日、直接会場へお越し下さい。貸会議室ですが、特に入り口で受付は必要ありません。
お問い合わせはfukurouzemiアットgmail.comまで。アットを@に変えてください。迷惑メール防止です。

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